アルバムリスト
アーティストリスト

片岡マミ「My Eternal Treasure」

片岡マミ「My Eternal Treasure」

  • 01 Our Love Is Here To Stay
  • 02 If You Could See Me Now
  • 03 When You Wish Upon A Star
  • 04 Never Let Me Go
  • 05 If I Were A Bell
  • 06 Fly Me To The Moon
  • 07 Once I Loved
  • 08 When I fall In Love
  • 09 It Could Happen To You
  • 10 A Time For Love

※配信なし

STLP-003

¥3,000+税

発売・販売元:株式会社ラルゴ音楽企画

※全国レコード店、またはスタジオ・トライブ店頭でも販売しています。

Boys featuring SHUN:TOP
コメント
片岡マミさんのレコーディングに寄せて
―辛島文雄トリオ初代ベース奏者― 金澤英明(2016年3月)

 もうかれこれ40年近く前の事。楽器を始めてまだ数年で、右も左もわからぬというのに、既に若手から脱却し日本ジャズ界の一翼を担う存在にならんとしていた辛島文雄さんのトリオに起用してもらった。今思うと冷や汗、赤面の限りだが、憧れのピットイン、タロー、エアジン等のステージに立てる喜びの方がそれを遥かに上回っていた。当然よく怒られたし、厳しい指導をしてもらったように記憶している。
 辛島さんのピアノ教室のスキー合宿も楽しい思い出だ。よく遊んだし、よく飲んだ。遊んだといえば、1982年から1994年頃まで、『世田谷ロリンズ』という野球チームで共に汗を流した。たかが草野球というなかれ、ミュージシャンらによるこのチームは、かなりの本気で、あまりの厳しさにやめていったメンバーも数多い。辛島さんは、このチームのエースピッチャーで、とにかく力強い球を投げた。練習で、僕は買ってきたばかりのバットをへし折られた事もある。フォークボールを習得するのに新幹線の中で人差し指と中指の間にボールを挟んでいたピアニストはおそらく彼以外にはいないだろう。何をするにも・・・!である。
 エルビン・ジョーンズのグループでの活躍はもちろん、その後も自身のユニットでジャズ界を突っ走ってきたのは皆さんご存知の通り。そんな辛島さんが今、病と闘っている。闘いながら懸命にピアノに向かう。今回、やはり旧知の仲、片岡マミさんの計らいで一緒にレコーディングする事となった。
 当日、スタジオにあらわれた辛島さんに会った時、正直今日は録れないかもしれないと思った。後日本人曰く、体調が最も悪い日だったらしい。とりあえず、ワンテイクずつでも録れればいいな、と思ったほどだ。けれど演奏が進むにつれ、辛島さんのモチベーションが徐々に上がっていくのが手に取るように分かった。「さっきの曲をもう一回やろう」と言い出すほどにエンジンがかかってきた。これが一流の音楽家の底力というものか。とにかく、最初ピアノの一音から唖然とした。体の辛さに負けず音楽する姿から出る音はこんなにも美しいものなのか!ベースを弾きながらとても良い気持にさせてもらった。
 今回の主役、片岡マミさんは地に足をしっかりつけて活動してきたシンガーで、僕とは永らく公私ともに仲良しである。何より嬉しいのは、片岡さんが僕に、辛島文雄さんとの初レコーディングの機会を与えてくれた事である。
素晴らしいアルバムになっていると確信している。おめでとう。
"You got your wish"
ピアニスト&コンポーザー 早川由紀子(2016年3月)

 「いつかCDを作るなら、ピアノは辛島さんにお願いしたいな!」
満面の笑みを浮かべて夢を語るマミさんの言葉を聞いてから、どれ程の歳月が流れたでしょうか。ゆっくりと時間をかけてその夢を温め続けていたマミさんでしたが、遂に実現の時を迎えることとなりました。
 マミさんとのお付き合いは、以前田町にあったライブハウス『三田倶楽部』から始まります。当時マミさんは故上野尊子さんの、私は辛島さんの生徒でした。『三田倶楽部』のマスター宮崎さん(現在小岩コチのオーナー)は、修業中の私達によくシットインの機会を作って下さいました。ここで仲間として親しくなったマミさんと、辛島さんのライブに出かけ、レッスンへも同伴出勤するうち、いつしかマミさんも辛島スピリッツに洗脳されてすっかり大ファンになっていました。マミさん曰く『辛島さんは上野尊子さんと同じく世界観を広げてくれた師匠の一人』とのこと。
 今回の収録曲は、マミさんがずっと歌い続けてきた大好きなレパートリーばかり。多くはインスト・ナンバーとしても有名なもので、過去の辛島さんのCDに収録された曲もあります。とくに2曲目の《If you could see me now》はマミさんが最も敬愛するタッド・ダメロンの名作。彼のビッグバンドには若かりし頃のエバンス、マイルス、コルトレーン等、錚々たるメンバーが参加していました。マミさんがエバンスやマイルスのインストものをこよなく愛し歌っているのは、タッド・ダメロンにどっぷり浸かっていたせい。タッド・ダメロンチップで炙られたマミさんの歌には、ビバップ~モダンジャズ黄金期への愛情とスピリッツが溢れんばかりです。それは、辛島さんが鍵盤に触れるとジャズフレーバーがムンムン漂ってくるのと同じことでしょう。今、病と闘いながらレコーディングをこなし、エネルギッシュなライブを続ける辛島さんはただただカッコイイ!! そして、マミさんの夢実現を応援してくれた金澤英明さん(b)高橋徹さん(d)岡淳さん(ts)。マミさんの歌に優しく寄り添いながら、辛島さんへのリスペクトをも込め、素晴らしすぎる時の共有をこのCDに残してくれました。収録曲はどれもマミさんにとって思い出深い曲です。1曲1曲味わい深く聴いていただければと思います。そしてマミさん、念願だった辛島さんとのアルバムは永遠の宝物ですね!本当におめでとうございます!
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